サン&リブのつくりかた 奥田政行× 中山ダイスケ× 稲村和之

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まず最初に、サン&リブについてお聞きしたいのですが。

稲村

山形食品株式会社の目的は、果物の価値を高め生産者の生活を豊かにしていくことです。具体的に言えば、生産者が作った果物のなかで、規格外品など出荷できないものを果汁にして販売することにより、少しでも生産者のお役に立ちたいという考えです。そのジュースは生産者自らも愛飲していますが、商品として売っている以上、もっと消費者の皆様からも親しんでもらおうという思いから、ブランド名を昭和48年に公募して、サン&リブとしました。サン&リブという名前の由来は、「太陽と生きる」という人間にとって基本的なところです。おいしさを届け、生産者と消費者をつなぐということを原点としています。

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流れるような説明をありがとうございます、素晴らしいです。

稲村

素晴らしい? じゃあ、拍手などを…。

一同

(拍手)

中山

もう、暗記してきた感じですね(笑)

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消費者に愛される商品のひとつとして『山形代表』は開発されたんですね。

稲村

そうです。中山先生にはパッケージを含めて提案いただき、奥田シェフには味についてアドバイスをいただきました。鬼に金棒、というわけです。


奥田政行
おくだ・まさゆき。イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフ。「食の都庄内」親善大使。1969年山形県鶴岡市生まれ。東京の有名店で修行の後に帰郷し、2000年に自店をオープン。2010年4 月、山形在来作物研究会(代表・江頭宏昌)と共同で第一回辻静雄食文化賞を受賞。同11月農林水産省「料理マスターズ」受賞。

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3人が知り合った経緯を教えてください。

稲村

一昨年、私がモンテディオ山形を観戦に行ったときに、辻スポーツ[注1]の辻社長から平林教授[注2]を通して「芸工大にはおもしろい先生がいらっしゃる」ということで、中山先生をご紹介いただきました。話してみて「キラリと光る男と会ったな!」という印象でした。

中山

(笑)

奥田

私も知り合ったのは一昨年でしたね。

稲村

そうそう、出会いの年でした。生協の橋本部長から、奥田シェフが山形のぶどうを使ったジュース[注3]を作りたがっているという話をお聞きして。お会いして、「この男は超能力を持っているな」と思いましたね。

奥田

(笑)

中山

奥田シェフは食べてるお皿にこう手をかざしますからね。料理に手かざししているシェフって僕は初めて見ました。「おいしくなあれ、おいしくなあれ」と念じているんです。「おいしく作ってないんかい!」と(笑)

稲村

彼とテイスティングしていると「降りてきた」と言うんです。天から商品のイメージが降りてきた、というわけ。最初、神の子かと思いましたよ。

奥田

素材となる十何種類のジュースをダーっと並べて、ブレンドして味見して作っていくんですけど、あの時はイメージ通り一発で複雑な味がピタッと決まったから、自分でも神がかっている、と思いましたね。最初に素材となるジュースの味を全種類覚えて「この比率にしたらこういう味になると思います」と言って作ったら、ぴったりストライクゾーン。イメージのまんま、すごくおいしかったんです。

中山

良いですね。イメージがあるから「当たる」んですよね。『山形代表』のデザインアイデアはいくつもあったんですが、こんなジュースであって欲しいというイメージに「あ、これだな」っていうものが当たるんです。料理も同じだと思いますけど、ぴたっと合った時に「何かの力がそこに導いてくれた」という気になるんですよ。ボンっと。

奥田

たぬきが変身する時の煙ですよ、ボンって。

中山

自分の才能じゃない感じがしますよね。そういう時。

稲村

この2人に出会ったということが、まさにそれ。自分以外の能力が働いて形になるっていう感じ。

中山

もちろん、そこに目指しているものがあるからできることなんですよね。作ったものや出会った人が当たっているか、外れているか判断しなくちゃならないので。

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サン&リブ商品のデザイン依頼を受けていかがでしたか?

中山

一番印象的だったのは、稲村社長が「何をいくらで売りたい」ではなく「ものがつくりたい」という話から入ってこられたこと。山形には果物がいっぱいあって、すごく品質は良いのだけど、りんごは青森、桃は福島、と知名度は他県にもっていかれていると。しっかりしたクオリティのものがこれだけの種類集まっている県はない。それを作る生産者の下支えをしたいと。ジュースは果物とは違った流通の仕方をしていくので、『山形代表』を飲んだ人が「へぇ、りんごジュースおいしいねえ。山形はぶどうもおいしいんだ」というようなものづくりがしたい、と話されました。「ウチは飲料屋なので、おいしいジュースを作るしかない」と。僕が山形に来て1年が過ぎた頃です。普通に「グラフィックデザインを教えてください」と呼ばれて来たんですけど、ここで全国一律のデザインの話をしてもしょうがないなと。地元のものを見ないで、世界のグラフィックデザインの話をしてもしょうがない、と感じていたので、ぜひやらせてくださいと。

奥田

確かにそうですね。

中山

どこのデザインも、最初は地元から生まれたものがワールドスタンダードになっているので。うちの学生は7割が東北圏出身なので、「東北のことをみんなで見てみようよ」と誘うことのできる何か材料が欲しかったんです。こういう会社があってこういうものがあるよ、一緒に考えてみないか? と学生を誘いたかったので、とても良かったと思っています。

奥田

しあわせは足下にある、と言いますね。いろんなところに行けば行くほどそうです。私は味を提案し形にしますが、私はちょっとだけ「こうしたらこうなる」と気づくだけ。イチローがなぜヒットが多いかって、打つ時に親指か何かを使っているんですよ。最後のほんのちょっとした差。この3人で一緒にやっていると、それぞれにそういった「差」を持っているなと感じます。

中山

担当は、稲村社長は生産、奥田シェフは味のディレクション、自分はビジュアルとなっていますけど。僕からすると、なんとなくおふたりや山形食品の製造者の狙い所がわかるので、僕が絵を作り、それに合わせて中身ができ、想いを聞いた奥田シェフが味を作るというコンパクトな連携ができているんですよね。最初が僕になる場合もあるけど…。

奥田

その時その時で先頭者が変わる。

中山

そうそう。稲村社長がこんな味のものを作ろうと提案して、それを奥田シェフが作って、僕が飲んでビジュアルを作ることもあるし。

奥田

デザインを見て、こういう味にしようとすることも。化学反応ですね。これが悪い方向に行くと事件になります。

一同

(爆笑)

中山

悪だくみし出すと、もう、えらいおもしろい犯罪が生まれそう(笑)

稲村

この3人だとその可能性もあります(笑)

注1
辻スポーツ
山形唯一のサッカープロショップ。日本代表のユニフォームをはじめ、モンテディオ山形グッズ・Jリーグレプリカユニホーム等を販売。サッカー好きは丸一日いても飽きない品揃えを誇る。

注2
平林教授
東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科教授、平林千春。モンテディオ山形の経済波及効果促進を図る「J1元気プロジェクト会議」の座長を務めている。

注3
ぶどうを使ったジュース
奥田シェフの構想から生まれた県産ぶどうのワイン風飲料。